ムーミン研究家森下圭子のフィンランド便り

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年末のご挨拶やクリスマスのプレゼントは多くが手作り。クリスマスマーケットにも数多くの手作りが並ぶ。

フィンランドは来年やっと独立100年になる。フィンランドはね、ずっと貧しい国だったのよと話す人たちも多い。質素に暮らしてきたと言えばいいだろうか。今でもみんなのDIY精神には感動するけれど、それはきっとフィンランド人のDNAだ。昔から何でも自分たちでしてきた。森の中にぽつんと家を建て、酪農を営む。麻や羊毛を紡いで自分たちで布を織り服を作ることもあれば、必要な日用品なども自分たちで作る人たちが大半だったという。

スウェーデン文化の影響を強く受けた地域や、いわゆる上流階級の人をのぞいて、食器は木をくりぬいたり、自然のものを使って自分たちで作っていた。

フィンランドのイッタラやアラビアの食器は、新しい商品がでても、昔のものと組み合わせられる。それが特長のひとつでもある。でもこれをずっと遡っていくと、カイ・フランクのティーマの前身キルタにたどり着く。当時、食器というのはセットで買うものだった。カップ、ソーサー、ボウル、いったいいつ使うんだろうという用途の器、一人暮らしだろうが家族で暮らしていようが選択の余地はない。カイ・フランクは「一枚から買えますよ」という食器の作り方をした。そして自分たちの食生活に必要なものを、必要なだけ買えばいいというようにした。あとで買い足せばいい。

キルタ(ティーマ)が単色なのも、これまで使ってきている食器をそのまま使ってもらいたかったから。自分で作った食器を使っていても、食器のセットを使っている人でも違和感なく組み合わせられるように単色にし、そのための色を吟味した結果なのだ。食器棚を見てみると、今でも木をくりぬいたような食器、代々受け継がれてきた素焼きの器、素朴な食器や手作りのものが、イッタラやアラビアと一緒に並んでいる。カイ・フランクは結果的に、フィンランドが伝統的に愛用してきた食器をフィンランド人が手放さなくてもいいような食卓を可能にしたといってもいい。

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12月は街じゅうがクリスマス一色に。こんな風にお店のショーウィンドウはもちろん、工事現場のクレーンのてっぺんにツリーが飾られたりもする。

フィンランドでは日常に手作りの伝統が脈々と生きている。それを特に感じるのがクリスマス。フィンランドの人たちが長年かけて培ってきたデザインも垣間見られる。藁を使った細工、小刀一本で作る木の飾り、森で拾ってきた苔や草や枝で作るクリスマスリース、松ぼっくりや石でつくった小人の置物。寒く雪に覆われた世界の中で、自然の恵みを生かした伝統的な飾りを作る。

ほかにクリスマス時期はクリスマスや年末のご挨拶として小さなプレゼントをするのだけれど、これも手作りが人気だ。夏に摘んだベリーや秋のきのこを使ったジャムやピクルス、手編みの靴下や手袋、ジンジャークッキー、デーツのケーキ、クリスマスマーケットへ行けば、種類も豊富で手のこんだ手作りがたくさんある。白樺の皮でつくったタワシなど普段みかけない昔の手仕事があれば、藁細工の技術やモチーフをヒントに、別の素材を使ってアクセサリーを作る若いデザイナーが店を出していたり。木彫りに羊毛を巻きつけた羊の置物、伝統や流行柄も登場する編み物の数々。起業している人、副業の人、そして趣味の人、いろんな人の自慢の手仕事をこの時期には楽しむことができる。

自分でなんでも作ってしまう人たち。だからか、デザインをみていても、皆さん本当に多才だと思う。ヴオッコ・ヌルメスニエミがベンチをデザインしていたとか。次回はそんな話を。

メリークリスマス!

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森下圭子(もりした・けいこ)さん略歴

1994年秋に渡フィン。ヘルシンキ大学にて舞台芸術とフィンランドの戦後芸術を専攻。現地での通訳や取材コーディネート、翻訳などに携わりながら、ムーミンとトーベ・ヤンソンの研究を続けている。映画「かもめ食堂」ではアソシエイトプロデューサーを務める。ヘルシンキ在住。

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