ムーミン研究家森下圭子のフィンランド便り

ブロックランプ
照明《ブロックランプ》 ハッリ・コスキネン/1996年/Design House Stockholm

いま、さまざまな分野を縦横無尽に行き来しながら「デザイン」する人で誰か一人と聞かれたら、ハッリ・コスキネンと即答する。フィンランドに暮らしながら国際的に活躍する最前線にいるのも彼だろう。MoMAの永久コレクションにもなっているブロックランプなどは、これまでも何度となく日本のメディアでも紹介されている。

ハッリ・コスキネン
福岡会場の開会式に出席したハッリ・コスキネン

つい先日ラップランドを旅したときのこと。ここで何度かハッリ・コスキネンの名前があがった。フィンランドの小さな生産者たちに、彼がどれだけ貢献してきたかという話だ。もちろんデザインで、である。

フィンランドで地産地消が食のキーワードになったのは、実はそれほど遠い昔の話ではない。一般の、つまり私たちが厳選された小さな生産者たちの食品や商品を店で買えるようになったのは、実はほんの10年ほどの間のことだ。

愛情たっぷりに育てられた野菜や家畜を、フィンランド全国を自転車で旅しながら探し続けたシェフがいた。このシェフをはじめ数人がたちあがり、やがて全国の美味しいものが集められたセレクトショップが首都ヘルシンキにオープンするのだけれど、ここにハッリ・コスキネンが加わっていた。彼の担当はデザイン。

当時小さな生産者たちは、まだまだどうやって品物を売っていいかよくわからない状態だった。パッケージはどうしたって二の次だし、そもそもデザイナーを雇う余裕もなかったりする。でも小さな生産者がいきなり大手のパッケージデザインのようなことをやってしまっても魅力的にはならない。ハッリ・コスキネンは、小さな生産者という個性を生かしながら、商品のビジュアルの意見やアドバイスを積極的に行ってくれたのだそうだ。

いまやスーパーでもフィンランドの小さな生産者たちの商品が並んでいる。どれも個性があって、そして美しい。個人的にフィンランドからのお土産としても重宝させてもらっている。

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オーロラを見るとトーベ・ヤンソンの『ムーミン谷の冬』からの一節を思い出す。 ちょうどオーロラのことを考えてたの。本当に存在するものなのか、それとも、そう見えているだけなのかって……なにもかも、すべてはとても曖昧なものなのよ。でもね、だからこそわたしを安心させてくれるのです。(おしゃまさん、訳・森下圭子)

こんなところにハッリ・コスキネンの影響があっただなんて。そういえばハッリ・コスキネン、実はムーミンランプ(Feelis Helsinki)も手がけている。かわいいムーミングッズはたくさんある。欲しいものも、考えだすとキリがない。そんな中で、ふと思ったのだけれど、ハッリ・コスキネンのムーミンランプって、憧れの存在だ。高価でなかなか手がでないとかそういうことでなく、ぱっと見たときに圧倒的な存在感を放っている。大好きになり、欲しいと思う。またかわいいと叫んでしまいたくなる。そして何よりも憧れてしまう存在なのだ。憧れる、家に置いて身近な存在になったとしても心を躍らせ続ける。これがハッリ・コスキネンなのかもしれない。

フィンランド・デザイン展の図録にはハッリ・コスキネンのメールインタビューも収められている。自分が覚えている最初の記憶、森に持って行くもの、フィンランドの好きな風景、好きな言葉など。図録を手にされることがあれば、ぜひ最後のメールインタビューもご覧ください。

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森下圭子(もりした・けいこ)さん略歴

1994年秋に渡フィン。ヘルシンキ大学にて舞台芸術とフィンランドの戦後芸術を専攻。現地での通訳や取材コーディネート、翻訳などに携わりながら、ムーミンとトーベ・ヤンソンの研究を続けている。映画「かもめ食堂」ではアソシエイトプロデューサーを務める。ヘルシンキ在住。

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