ムーミン研究家森下圭子のフィンランド便り

Marimekko
愛知県美術館に展示中のマリメッコのテキスタイルたち

フィンランド・デザイン展は第二会場に場所を移した。愛知県美術館。5月13日に話をさせていただくことになっているので(無料です。ぜひお越しください!)美術館や展示の様子を教えてもらったところだ。

送ってもらった写真を見ていると、色が目に飛び込んでくる。愛知県美術館の特徴はその天井の高さなのだそうで、高さをうまく利用すると、たとえばマリメッコの柄や色が際立つ。また天井が高いことで広く感じられる空間からは、色が目に飛び込みやすくなっているようだ。フィンランドのデザインは色が大切な特徴のひとつなんだと改めて感じる。

フィンランドの人たちはカーテンをよく替える。ちょっとしたイベントに合わせて、たとえばイースターならイースター限定のカーテンにする人もいるくらいだ。私はそれほどでないにせよ、季節ごとには替えるように心がけている。生地を売る店では、「カーテン縫い無料」というサービスをウリにする。多くのオフィスや家が、壁や天井をはじめ白い空間を基調にしているので、カーテンひとつで部屋の印象はガラリと変わる。そして、みんなこういう気分転換を必要としているのだろう。

マリメッコの色づかいや柄でよく言われるのは「フィンランドは冬が暗くて長い」から、家の中を明るく演出するのだということ。確かにそれはある。冬に明るい色の服装で外を歩いていると、通りがかりの人がほめてくれるのも、暗い街の中にぱっと明るい色があると、少し気分が上がるのかなと思う。

construction area
建築現場を囲う板塀でアートというのはヘルシンキによくある風景。こちらは近くの小学生たちがクラス単位で絵を描いた板塀の一部。

マリメッコだけでない。ガラスのイッタラも陶器のアラビアも、自分たちの出せる色彩の多さが自慢だ。マリメッコのデザイナーは、たとえば石や流れ木などを持参して、色の調合を考えてくれる専門のスタッフに「こういう色がいい」と相談したりもする。自然の色を表すためには、いったいどれくらいの色を調合するのだろう。食器として赤を出すことは至難の業といわれるけれど、アラビアもイッタラも赤を得意とする。つい先日、アラビアはムーミン美術館とのコラボでトーベ・ヤンソンの原画を使ったマグを完成させたけれど、これなど27の色のグラデーションがひとつのマグに展開されている。

knitting guerilla
編み物で町を明るくしようという編み物ゲリラがフィンランド全国で流行したことがある。そのときのひとつ。公園の緑の中でも目をひく明るい色を使っている。

フィンランドと日本は感覚が似ているとか、デザインの好みが同じだとかフィンランドの人たちに言われることがよくある。でも圧倒的に違うなと思うのは色彩感覚。これは意外とフィンランドからは聞かれないのだけれど、日本の人たちが口を揃えて言うことでもある。今回の展示にあるトーベ・ヤンソンの絵本『それからどうなるの?』は、見開きで使用する色は3色のみ。ただし、ページに開いている穴越しに次のページ、そのまた次のページの3色が見えるようになっている。この3色の組み合わせも他のページとの組み合わせも、日本の絵本でまず見かけない具合なのだ。私自身これまで何冊か絵本を翻訳させてもらっているけれど、訳したいと思う絵本は何が魅力的かって、やっぱり日本ではみられない色彩感覚だ。

巡回展は場所によって、展示の構成や見せ方が違っているのも見どころ。もう福岡で見たからという方もいらっしゃるかと思いますが、愛知県美術館もいかがでしょうか。第二会場での展示は5月28日までです。

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森下圭子(もりした・けいこ)さん略歴

1994年秋に渡フィン。ヘルシンキ大学にて舞台芸術とフィンランドの戦後芸術を専攻。現地での通訳や取材コーディネート、翻訳などに携わりながら、ムーミンとトーベ・ヤンソンの研究を続けている。映画「かもめ食堂」ではアソシエイトプロデューサーを務める。ヘルシンキ在住。

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